Speaker
Description
$U(1)_{L_{\mu}-L_{\tau}}$ゲージ対称性に基づく模型は,ミューオン異常磁気モーメントの測定値と理論予測値の不一致を説明できる.さらに,この対称性を持つ模型はニュートリノ質量やマヨラナ位相といった実験で未定のパラメータに予言を与えることも分かっており,魅力的である.
本研究では,まず,最新の実験結果に基づき,$U(1)_{L_{\mu}-L_{\tau}}$対称性の破れが1つのスカラー場によって引き起こされる最小$U(1)_{L_{\mu}-L_{\tau}}$模型のニュートリノ質量行列構造の解析を再検討した.このとき,対称性を破るスカラー場の電荷に応じて,それぞれの模型が固有のニュートリノ質量行列構造を予言する.この構造からニュートリノ質量と混合パラメータの間に自明でない関係が得られる.我々はこの解析によって,対称性を破るスカラー場として $SU(2)_L$二重項スカラー$\Phi_{+1}$ ($U(1)_{L_{\mu}-L_{\tau}}$電荷$+1$,ハイパチャージ$+1/2$)を含む最小模型が最新の実験結果から許されるものであることを明らかにした.
一方で,$U(1)_{L_{\mu}-L_{\tau}}$ゲージ対称性が$\Phi_{+1}$のような標準模型の非シングレット表現の真空期待値によって破れているとき,$Z - Z'$混合を介してFlavor Changing Meson Decay(FCMD)とAtomic Parity Violation(APV)に追加の寄与が生じる.そこで,これらを考慮し,模型に依存する新しい制限を評価した.さらに,Bメソン崩壊・ユニタリ ティー制限・電弱精密測定などのHiggsセクターからの制限も評価した.その結果,上述の質量構造解析では許される$\Phi_{+1}$を含む最小模型は,この新しく評価した制限により完全に排除されることがわかった.
最後に,我々は$U(1)_{L_{\mu}-L_{\tau}}$ゲージ対称性を破る$SU(2)_L$一重項スカラーを最小模型に追加する拡張を考えた.この拡張によりFCMDやAPVからの制限は緩和する.これらの制限の緩和具合は追加した2つの真空期待値の比に依存する.そこでミューオンg-2の乖離を説明可能な真空期待値の比の許容範囲を明らかにした.
この発表は[arXiv:2401.17613]とその後の進展に基づく.