標準模型における未解決問題のいくつかは、拡張されたヒッグスセクターを考えることで説明することができる。
特に、拡張ヒッグス模型を考えることで容易に導入されるCPを破る新しい相互作用は、バリオン数非対称性問題を解決する上で重要である。
一方で、ヒッグスセクターにおけるCPを破る相互作用は、カストディアル対称性と呼ばれる大局的対称性を破ることが知られている。
荷電ヒッグス粒子のWボソンとZボソンへの崩壊過程が、カストディアル対称性の破れに伴って量子補正で生じることは知られているが、CPの破れに伴う寄与も現れることが期待できる。
本講演ではCP対称性を破る最も一般的なtwo Higgs doublet modelにおいて、カストディアル対称性の破れ、およびCPの破れの帰結としての$H^\pm -> W^\pm Z$崩壊について説明し、コライダー現象論についても議論を行う。
高エネルギー$\mu^+ \mu^+$コライダーにおけるヒッグス粒子生成について考える。一般に高エネルギーのレプトンコライダーでは$W, \, Z$ボソン衝突による生成が支配的である。$Z$ボソンの衝突は$\mu^+ \mu^+$コライダーでも同様である。$W$ボソンの衝突は、電荷が同符号の粒子を衝突させるためにより高次の反応になるが、十分大きなエネルギーでは、断面積が異符号の粒子を衝突させる場合に比べて$\mathcal{O}(1)$程度まで回復する。この結果は他のコライダーでも重要である。
We study the CP-even neutral Higgs boson decays h -> c \bar{c}, b \bar{b},
b \bar{s}, \gamma \gamma, g g in the Minimal Supersymmetric Standard Model (MSSM)
with general quark flavor violation (QFV) due to squark generation mixings,
identifying the h as the Higgs boson with a mass of 125 GeV. We compute the widths
of the h decays to c \bar c, b \bar b, b \bar s (s \bar b) at full one-loop...
We propose a new formulation of manifestly Lorentz-covariant spinor wave-packet basis. The conventional definition of the spinor wave packet is problematic in the sense that it suffers from mixing with other wave packets under Lorentz transformations. Our formulation evades this difficulty of mixing. This wave packet forms a complete set that can expand a free spinor field in a Lorentz...
The decay of the mediator particle into standard model (SM) particles plays a significant role in
exploring the dark sector scenario. We consider such a decay, taking the dark photon mediator
as an example that mixes with the SM photon. We find that it requires a careful analysis of the
decay rate in the presence of an SM vector boson (e.g., Z boson, ρ meson, and true muonium,
etc.) nearly...
In this talk, we discuss minimal spontaneously broken local $U(1)’$ models. The candidates of $U(1)’$ symmetry are $U(1)_{B-L}$, $U(1)_{L_i - L_j}$ and hidden $U(1)$ so that the SM Higgs field is not charged under $U(1)’$. When $U(1)’$ gauge symmetry is spontaneously broken we have both new gauge and scalar bosons. We show these models can provide multi-Z’ signatures at the LHC via scalar...
In a model of an extra U(1) charged scalar dark matter, the degenerated U(1) partner particle may be long lived. Such a long-lived particle may be discovered in future long-lived particle search such as MATHUSLA. We present a viable benchmark point in such models.
QCDアクシオンは、強いCP問題を解決する粒子であり、ダークマターの最有力候補の一つである。もし、QCDアクシオンとは別のアクシオンが存在する場合、それらはゲージ場との結合を通じて混合することが知られている。この際、アクシオン質量の混合により、QCDクロスオーバー付近で元々重い質量固有値と軽い質量固有値が入れ替わる準位交差が生じることがある。この準位交差において、エネルギーの受け渡しが断熱的に行われる可能性があるが、その詳細は未だ明らかにされていない。私たちは数値計算を通じて準位交差が断熱的に行われる条件を厳密に評価した。その結果、アクシオン同士の振動によるうねりが重要な役割を果たすことがわかった。また、アクシオンがダークマターとなるパラメータを特定し、将来のアクシオン探索に対する検証可能性を議論する。
標準模型を超える新しい素粒子物理学の有力な候補として、Randall-Sundrum(余剰次元)模型が挙げられる。この模型では、適当なradionの安定化法を導入することで、様々な物理パラメータの階層性などを説明することができる。また、初期宇宙で近似的なスケール対称性の破れに準ずる宇宙論的相転移が起きると考えられており、それに伴う豊富な宇宙論的現象が起きる。本発表では、Randall-Sundrum時空に新しい強結合のゲージ場を導入し、そのゲージ場の閉じ込めのダイナミクスを用いた新しいradionの安定化法の紹介をする[1]。また、その宇宙論的相転移で起きる現象論である、重力波の生成とその検証可能性[2]やバリオン非対称性や暗黒物質の生成機構[3]についても説明する。
[1]arXiv:1910.07546
[2]arXiv:2306.17086
[3]arXiv:2406.12956
ミューオン異常磁気能率の測定結果が標準模型の予言とのズレを示している、いわゆる「ミューオンg-2アノマリー」は、その理論値の評価に関する議論はあるものの、標準模型を超える新物理の兆候を示している可能性がある。このアノマリーを説明するために提案されている模型の一つが$Z_4$不変性を持つTwo Higgs doublet modelである。この模型ではヒッグス・セクターとレプトンに$Z_4$電荷を割り当て、ヒッグス粒子の媒介によってミューオンとタウの遷移を実現する。本講演では、このような特徴的な相互作用を持つ模型を、ミューオン・コライダーでのミューオン対消滅過程やミューオン散乱過程を通して検証する可能性について報告する。
We study the possibility of measuring T-violation in future long baseline neutrino oscillation experiments. By assuming a neutrino factory as a staging scenario of a muon collider at the J-PARC site, we find that the ν_e → ν_μ oscillation probabilities can be measured with a good accuracy at the Hyper-Kamiokande detector. By comparing with the probability of the time-reversal process, ν_μ →...
U(1)$_{L_\mu-L_\tau}$ゲージ対称性に基づく模型は,ミューオン異常磁気モーメントの測定値と理論予測値の不一致を説明できる.さらに,この対称性を持つ模型はニュートリノ質量やマヨラナ位相といった実験で未定のパラメータに予言を与えることも分かっており,魅力的である.
本研究では,まず,最新の実験結果に基づき,U(1)$_{L_\mu-L_\tau}$対称性の破れが1つのスカラー場によって引き起こされる最小U(1)$_{L_\mu-L_\tau}$模型のニュートリノ質量行列構造の解析を再検討した.このとき,対称性を破るスカラー場の電荷に応じて,それぞれの模型が固有のニュートリノ質量行列構造を予言する.この構造からニュートリノ質量と混合パラメータの間に自明でない関係が得られる.我々はこの解析によって,対称性を破るスカラー場としてSU(2)$_L$二重項スカラー$\Phi_...
We discuss the stabilization of multiple moduli by utilizing Siegel modular forms
in the framework of $Sp(2g,\mathbb{Z})$ modular invariant theories.
We derive the stationary conditions at CP-conserving fixed points for a generic modular- and CP-invariant scalar potential.
The stabilization of multiple moduli is explicitly demonstrated in $Sp(4,\mathbb{Z})$ and $Sp(6,\mathbb{Z})$ modular...
ヒッグス粒子が発見されたが、ヒッグス粒子との結合は標準理論の予言から外れる余地がある。拡張ヒッグス模型は標準理論からのずれを実現可能であり、ヒッグスポテンシャルによって特徴づけられる。ヒッグスポテンシャルの形が1つの古典場によって記述されるニアリーアラインドヒッグス模型の代表として、古典的スケール不変模型、擬南部・ゴールドストーン模型そしてタドポール誘発模型が挙げられる。ヒッグスポテンシャルの形状によって分類する方法は、多数の拡張ヒッグス模型を効率よく精査することができる。本研究では、タドポール誘起模型のワンループレベルの3点ヒッグス結合を中心に、トップクォークのループ寄与を含む3点ヒッグス結合を計算し、将来加速器実験における実現可能性を検討する。また、最後に、高輝度LHCとILCがいくつかの拡張ヒッグスモデルを識別できることを示す。現在進行中の研究の結果を発表する。
Aoki-Kanemura-Setoモデル(AKSモデル)は、ニュートリノ質量、ダークマター、バリオン数非対称性を同時に説明しうる輻射シーソー模型である。2022年には青木、榎本、兼村がAKSモデルを拡張し、3つの現象を同時に説明するベンチマークポイントを発見したが、パラメータが多く、Flavor Changing Neutral Currentはad hocな仮定で抑制するなどの問題点もあった。本講演ではよりシンプルで、FCNCを対称性によって抑制するオリジナルのAKSモデルに新たにCPの破れを導入し、3つの現象を同時に説明できる可能性について議論する。
レプトンフレーバー非保存過程(LFV)は標準模型で禁止されているため、標準模型を超える物理への貴重な足掛かりとなる。LFVを引き起こす中間状態の新粒子は粒子が重い場合には直接的に探索できないため、新粒子の模型を仮定し反応過程から間接的に探索しなければならない。その中から有力な模型を絞り込むためには多くのLFV反応の検証が必要であり、現在も様々な実験が行われている。
本研究では新しいLFV反応として、現在実験的な生成が試みられているミューオンと反ミューオンの束縛状態から反ミューオンと電子(またはミューオンと陽電子)に崩壊する反応を提案する。この反応として、スカラー型、ベクトル型、双極子型演算子を仮定し、既存の実験結果と照らし合わせることで、演算子ごとに崩壊率の評価を行い、将来実験における可能性を考察する。
CPの破れに感度のある観測量である電子の電気双極子能率(EDM)は、実験の精度が大幅に向上しているため、TeVスケールの標準模型を超えた物理(BSM)を探索できることが期待されている。本研究では、BSMフェルミオンとスカラーによるCPを破る湯川相互作用が2ループで生成する電弱ボゾンのCPを破る次元6の演算子(電弱ワインバーグ演算子)をスカラー粒子に依存しない形式で評価した。そして、この電弱ワインバーグ演算子が誘起する電子EDMへの寄与を計算した。この寄与はスカラーがBSMスカラーである場合は3ループで表れる新しい寄与である。一方で、スカラーがヒッグスの場合は、新物理模型が誘起する電子EDMの代表的な2ループの寄与であるBarr-Zee diagramへの1ループの輻射補正と同じループ次数なので、Barr-Zee...
時空の捩じれ(捩率)を内包するEinstein-Cartan重力理論では、捩率のみで構成されるHolst項を考えられる。この時高次のHolst項は捩率をダイナミカルな量にする。近年、このダイナミカルな捩率を用いたインフレーションモデルが提案された。よって捩率と物質場の相互作用はインフレーション後にそのエネルギーの遷移を与える。本研究ではこの捩率と物質場の相互作用がフェルミオンをいかに生成するかを数値的に評価した。本発表はarxiv: 2406.14982の研究に基づく。