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Sep 8 – 12, 2025
京都大学基礎物理学研究所
Asia/Tokyo timezone

Is quantum mechanics consistent with thermodynamics?

Sep 10, 2025, 4:00 PM
35m
湯川記念館 パナソニック国際交流ホール (京都大学基礎物理学研究所)

湯川記念館 パナソニック国際交流ホール

京都大学基礎物理学研究所

京都市左京区北白川追分町
Invited talk Invited talk

Speaker

Prof. Akira Shimizu (IPST, The University of Tokyo / QIQB, The University of Osaka / BlocQ, Inc.)

Description

マクロ世界では,量子論とはまるで異なるマクロ法則が成り立っている.なぜ量子論からそのような法則が出現するのだろうか? このミクロ法則とマクロ法則の乖離の問題は,古典力学の時代から議論されてきた大問題であるが,量子力学の誕生により,新たな光があてられて続けている.
 発表者らが最初にこの問題に取りくんだのは,伝導体の非平衡ゆらぎが,メゾスコピック伝導体とマクロ伝導体では,定性的にもまったく異なる振る舞いを示す原因が.decoherenceではなくdissipationであることを示したことであった[1].decoherence だけでは,マクロな世界には移行しないのである.さらに,安定性がマクロ系の波動関数を決めることを見いだし[2,3],それを一般化して普遍的な結果を導いた[4].また,マクロに異なる重ね合わせ状態を見つけるための一般的な指標を提唱し[4,5],それが,量子計算機や量子センサーの性能と結びついていることを指摘した[6,7,8],さらに,マクロ系の測定理論により,長年の懸案だった非平衡量子統計力学の基本的問題に解答と修正を与えた[9-11].最近では,熱力学・統計力学と量子論との整合性の問題を,さらに深掘りしつつある[12-15].本講演では,その最新の結果[15]を報告する.
 平衡状態は,指数関数的に多数の状態が混合されているGibbs状態には限られず,たとえば一つの純粋状態でも平衡状態でありうる,という事実は広く知られつつある.しかしこの事実は,Gibbs状態を用いたこれまでの第二法則の証明を破綻させるので,量子論と熱力学の整合性の新たな問題を突きつけており,未だに未解決である.我々は,この問題に真正面から取り組んだ.まず,「マクロ変数」と「マクロな精度」の定義を明確化し,それを用いて「マクロに等価な状態」の概念を導入した.そして,熱力学・統計力学において,平衡状態の定義が文献によってばらついている問題を,この等価性を用いて再定義することで解決し,この定義から外れる多くの定義では熱力学第二法則と矛盾することを指摘した.さらに,「マクロな操作」も明確に定義し,第二法則が成り立つかどうかを調べた.その結果,系の体積と無関係な時間スケールまでは常に第二法則が成り立つが,それより長い時間スケールでは、破綻する場合があることが証明できた.
 上記の結果が,今後の課題として突きつけるのは,長い時間スケールでも第二法則が満たされるという経験事実が成り立つ理由は何か,である.上記の厳密な結果は,操作的には,次のことを想定したことになる:(i) 平衡状態の量子状態を完全に知っている,(ii) 我々が明確に定義した「マクロな操作」の実行が完全である.我々は,これらの「完全さ」のいずれか(あるいは両方)がマクロ系の実験では満たされないことが,量子論と熱力学の整合性をもたらす最後のピースの有力候補ではないかと考えている.今後のさらなる研究の進展が待たれる.

[1] AS and M. Ueda, PRL69, 1403 (1992). [2] AS and T. Miyadera, PRL85 (2000) 688. [3] AS and T. Miyadera, PRE64 (2001) 056121. [4] AS and T. Miyadera, PRL89 (2002) 270403. [5] AS and T. Morimae, PRL95 (2005) 090401. [6] A. Ukena and AS, PRA69 (2004) 022301. [7] AS, Y. Matsuzaki and A. Ukena, JPSJ82 (2013) 054801. [8] M. Tatsuta, Y. Matsuzaki, A.Shimizu, PRA 100, 032318 (2019). [9] K. Fujikura and AS, PRL117, 010402 (2016). [10] AS and K. Fujikura, J. Stat. Mech. (2017) 024004. [11] K. Kubo, K. Asano and AS, JPSJ91, 024004 (2022). [12] Y. Chiba, K.Asano, AS, PRL124, 110609 (2020). [13] Y. Yoneta and AS, J. Stat. Mech. (2023) 053106. [14] Y. Chiba and AS, PRR5, 033037 (2023). [15] Y. Chiba, Y. Yoneta, R. Hamazaki and AS, in preparation.

Primary author

Prof. Akira Shimizu (IPST, The University of Tokyo / QIQB, The University of Osaka / BlocQ, Inc.)

Co-authors

Dr Yuuya Chiba (RIKEN) Dr Yasushi Yoneta (RIKEN) Dr Ryusuke Hamazaki (RIKEN)

Presentation materials