Speaker
Prof.
Takuya Hirano
(Gakushuin University)
Description
量子力学は、ベル不等式に代表されるように、日常的な直観に反するような概念をその基礎に含んでおり、解釈をめぐって多くの深い議論が行われてきた。20世紀の終わり近くに、このような量子力学の不思議な原理を直接利用することにより、従来よりも優れた情報技術を実現できることが理論的に示され、量子技術に関する研究が活発に行われるようになった。現在では、我が国でも、経済成長や我々の安心で豊かな生活に直接貢献するという期待から、多くの研究開発資金が投入されている。そのような量子技術の中で、最も応用に近いと考えられ、早期の実用化が期待されてきたのが量子暗号である。量子暗号は、どんなに高度な技術を有する盗聴者に対しても安全な通信を実現できる技術であり、従来の技術の場合は解くのに時間が掛かるという計算量的な安全性しか実現できないのに対し、質的に優れた安全性を可能にする。その期待に応えるように、実験及び理論研究が急速に進展しており、製品化も実現されている。しかし、一方で、米国国家安全保障局(NSA)等の機関から量子暗号の実利用に対する懸念も表明されており、順風満帆に実用化が進むという状況ではない。本講演では、このような量子暗号の現状を、私達が取り組んでいる連続量量子鍵配送やエンタングルメント生成も含めてご紹介したい。
Primary author
Prof.
Takuya Hirano
(Gakushuin University)