Speaker
Description
無限自由度の環境系を持つ開放量子系では不可逆なデコヒーレンスが生じる。そのダイナミクスを記述する典型的なモデルとして、スピンと環境が結合している純位相緩和型スピンボゾンモデル [1]がある。このモデルは時間に局所的なカノニカル型のマスター方程式[2]
\begin{align}
\frac{d\rho(t)}{dt}=\gamma(t)\Big(\sigma_z \rho(t) \sigma_z -\frac{1}{2} {\sigma_z \sigma_z,\rho(t) }\Big)
\end{align}
で記述される[3]。ここで、$\rho(t)$はスピンの密度演算子、$\sigma_z$は位相フリップを表すパウリ演算子、$\left\{\cdot\right\}$は反交換子を表す。微小時間間隔で完全正値なダイナミクスに分割できるという観点から、$\gamma(t)$が常に正値のときにはマルコフ、負の値もとる場合は非マルコフになるということが知られている[2]。我々は、局所的な相互作用のもとで、環境系の分散が波数$|𝑘|$の冪乗でかける$D$次元の純位相緩和型スピンボゾンモデルを解析した。
本発表では環境の分散のカットオフと非マルコフ性を表す$\gamma(t)$、さらにスピンの固有エネルギー差を推定するFisher情報量との関係を議論する。
[1] G. M. Palma, K.-A. Suominen, A. Ekert, Proc. R. Soc. Lond. A 452, 567 (1996).
[2] Michael J. W. Hall, et al., Phys. Rev. A. 89, 042120 (2014).
[3] Breuer, Heinz-Peter, and Francesco Petruccione. The theory of open quantum systems. OUP Oxford, (2002).