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Sep 8 – 12, 2025
京都大学基礎物理学研究所
Asia/Tokyo timezone

観測主体としての脳:認知課題中マウスのスパイクデータに潜む時間の矢とエントロピー流

Sep 11, 2025, 4:10 PM
1h 35m
ポスター ポスター②

Speaker

KEN ISHIHARA (Hokkaido University)

Description

本研究では、視覚課題中のマウス脳スパイクデータに対して、非定常かつ非平衡な因果ダイナミクスを解析するため、状態空間キネティック・イジングモデルを新たに構築した。このモデルは、複数の単一神経活動の時系列から時変結合パラメータと外場をベイズ的に推定し、エントロピー生成に関わる「エントロピー流(bath entropy flow)」を平均場近似により定量化する。実データへの応用では、課題に積極的に取り組んだ条件下で、神経活動の平均は低下する一方、因果結合の変動性や非対称性が高まり、それが一部の高頻度発火ニューロンにおけるエントロピー流の増加をもたらすことが示された。これにより、スパースな活動かつ、選択的な情報処理が非対称的かつ非平衡な形で進行していることが示唆される。本手法は、観測に基づく因果構造の復元と時間の矢の推定により、脳の熱力学的・情報論的構造を理解する上で有用である。

本研究は古典系を前提とし、動物の認知活動に関与する神経細胞集団が示す非平衡・非定常状態を定量化した。この視点は、系が外界を観測する過程における情報変化や時間の非対称性に関心を持つ研究者にとって、観測行為の物理的含意を再考するうえで、何らかの接点となることを期待している。

Primary author

KEN ISHIHARA (Hokkaido University)

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