一般に魔法状態蒸留において,$[[n,k,d]]$符号を用いた際の蒸留効率は$\gamma=\log_d (n/k)$で表現され,$\gamma$が小さいほど効率的なプロトコルであることが知られている.一方で漸近的な蒸留シナリオにおけるレートと$\gamma$の関係は断片的にしか知られていなかった.本研究では一般化されたMEKプロトコルを用いて、$\gamma$の値が良くない場合でも漸近領域で任意のサブリニアレートを実現できる魔法状態蒸留プロトコルの存在を証明する.具体的には,良いレートを実現できる量子誤り訂正符号族を構成し,このプロトコルが成功する確率がゼロでないことを示す.本プロトコルは蒸留後状態のエラー率$\varepsilon_{targ}= 10^{-1700}$までの領域において,現時点で発表されているリニアレートのプロトコルよりも効率的であることを示す.
量子論において複数の操作を同時に行えないという性質をincompatibility(両立不可能性)といい、同時測定不可能性やNo-cloning定理などの性質を統一的に記述する。近年、incompatibilityは量子情報処理におけるリソースとして注目されており、incompatibilityの「強さ」を特徴づけることが求められている。本研究では、「利用可能な状態が制限された状況下でのincompatibilityの検知可能性」という操作的な観点に基づきincompatibilityの「強さ」を比較する前順序を導入する。具体例としてunbiased qubit observableと呼ばれるノイジーなパウリ測定の組を取り上げ、この前順序がincompatibilityの強さについてこれまで識別できなかった階層を与えることを数値的に示した。また、unbiased qubit...
周期的に測定を変化させることで論理量子ビットを動的に生成・操作できるFloquet codeを含む表面符号のエラー復号器として、画像生成で注目されている拡散モデルを適用した。拡散モデルはノイズを加えて分布を拡散させ、逆過程で元の分布を推定する仕組みを持つが、この仕組みをエラー復号に応用し、エラーの蓄積過程を拡散過程とし、逆にエラーの復号を逆拡散過程として捉え、物理量子ビットの誤りパターンを生成的にサンプリングしながら復号を行う。従来広く用いられてきたMinimum-Weight Perfect Matching(MWPM)のようなグラフアルゴリズムと異なり、多様なノイズモデルやコード構造に柔軟に対応できる可能性がある。本研究では、様々なエラーモデルに対してシミュレーションすることで、その有効性について検証する。
We will discuss a geometric counterpart of the Bell’s inequaliti(es) in holography.
量子論を拡張する方法として,操作論的な概念を残した一般確率論(GPTs)と,それに包含されるが,量子論の代数的構造を拡張して代数的に抽象化して得られるEJAs(Euclidean Jordan...
本研究では、LHC-ATLAS実験におけるB0・反B0中間子対のフレーバー相関の測定により、ベルの不等式の破れを検証する。これは世界で初めて測定の局所性条件を担保した上での中間子フレーバーについてのベル不等式の検証となる。LHC Run-2時に取得したデータを用いた解析に向けて、感度向上のためにより低い運動量を持つ飛跡情報を用いた一連の生成粒子の再構成手法を新たに開発し、事象選別条件の最適化を行なった。本ポスター発表では、系統誤差評価を含めた本解析手法の性能評価、並びにベル不等式の検証感度評価について報告する。
To understand the emergence of macroscopic irreversibility from microscopic reversible dynamics, the idea of coarse-graining plays a fundamental role. In this work, we focus on the concept of macroscopic states, i.e. coarse representations of microscopic details, defined as states that can be inferred solely from the outcomes of macroscopic measurements. Building on the theories of quantum...
Bell-CHSH不等式を破る量子相関は,測定独立な局所隠れ変数理論によって説明できないことが知られている.しかし,この不等式の破れは,隠れ変数の存在・局所性・測定独立性という仮定のうち,どれがどの程度破れているかを定量的に示すものではない.そこで2023年我々は,測定独立性の破れと隠れ変数の存在に関する定量的尺度を導入し,それらの値と再現可能なCHSH値とのトレードオフ関係(緩和ベル不等式)を示した.ただし,この先行研究では隠れ変数の局所性(分解可能性)のみを仮定し,経験分布のNo-Signaling条件を考慮していないため,タイトな関係とはなっていない.本研究ではこの点に着目し,No-Signaling条件下でのトレードオフ関係の再検討を行う.その結果,一部の領域において,測定独立性が破れるほど再現可能な相関が小さくなるという,直感に反する振る舞いを発見した.
J....
量子コンピュータ上で指数関数的に小さい空間を用いて大規模な古典系をシミュレートする研究が注目を集めている。先行研究では、長距離相互作用を持つ古典系のシミュレーションにおいて、指数関数的な量子加速が示された。しかし、多くの現実世界の古典系、例えば偏微分方程式に由来する系などは、局所的な相互作用しか持たない。このような条件下でも量子アルゴリズムが指数関数的な優位性を持てるのかという疑問が残る。本研究では、この問題に答えるため、以下3つの主要な結果を示す。第一に、このような古典系の短時間(多項式時間)発展を効率的にシミュレートする脱量子化アルゴリズムを与える。これは、短時間発展では指数関数的な量子優位性が得られないことを意味する。第二に、短時間発展をシミュレートする量子アルゴリズムの計算複雑性が、多項式時間の確率的古典計算と同等であることを示す。第三に、長時間(指数時間)のダイナミクスにお...
本研究[1]では,Robertson–Schrödingerによって定式化された不確定性関係を一般化し,新たな下限項を導入した関係を提示する.この新たな不確定性関係は,近年我々が導入した,量子状態で重み付けされた交換子ノルムの不等式[2]を応用することで導出される.追加された下限項は2つの物理量の交換子によって定まり,Robertson項による従来の寄与に加え,それとは異なる量子的な起源を持つことが示される.さらにこの項は密度行列のスペクトル構造を明示的に含むため,有限次元系において状態の混合度が高くなるほど顕著に現れる項となっている.加えて,2準位系においては,提示する不確定性関係は常に等号を満たし,不確定性のトレードオフ関係を完全に特徴付ける.本研究の結果は,従来の不等式では捉えきれなかった非可換性に起因する寄与を明らかにし,不確定性関係の基礎理解に新たな視点を与える....
高次元時空における物理理論は4つの基本的な相互作用を統一的に議論するための有望なアイデアである。我々の観測可能な世界は実質的に4次元なので、余剰次元をコンパクト化した高次元ブラックホール解が盛んに議論されている。5次元squashed Kaluza-Kleinブラックホール解では、余剰次元のコンパクト化が無限遠で起こり、実効的に4次元時空が得られるため、この解を現実的な高次元ブラックホールモデルの1つとみなすことができる。そこで、squashed...
Trotter分解は量子計算において量子ダイナミクスを効率よくシミュレートする最も基本的な手法である。近年、Trotter分解の誤差に対して交換子スケーリングという普遍的な性質が明らかになり、Trotter分解が系サイズに関して良いスケーリングのコストを持つことが示された。しかし、その解析は全ての可能な初期状態に対して最悪な誤差に基づくものであり、低エネルギー状態など実際の計算で興味のある初期状態に対しては誤差と計算コストを過剰に評価するものとなっている。本研究では、初期状態が低エネルギー状態であるときTrotter分解におけるアルゴリズム誤差が本質的に減少し、それに伴い計算コストもスケーリングレベルで改善されることを証明した。特に我々の結果は理論上さらにスケーリングを改善できない最適なものとなっており、本発表ではそれらの結果について説明する。
量子固有値変換は様々な量子アルゴリズムを高効率に実行できることから将来の量子計算機での実行が期待されている。一方、多数の補助量子ビットや多重制御ゲートが必要となるため近い将来での実行は困難であると考えられている。近年提案されたTrotter法を用いた量子固有値変換はこれらの課題を克服しつつ従来と同等の計算タスクを実行可能であり、初期の量子計算機における実装が期待されています。しかしTrotter分解による誤差が計算の過程でどのように蓄積されるか、またどのようなTrotter分解等のパラメーターを用いて回路を構成すればよいかについては十分に理解されていない。本発表では古典数値計算によるシミュレーションを行いTrotter分解に伴う誤差が計算過程でどのように蓄積されるか、またパラメーターによって誤差にどのような影響を与えるかについて調べた研究について発表する。また、さらに得られた結果をも...
量子測定は一般に、測定対象の量子状態に擾乱を与える。しかしながら、特定の条件を満たす測定においては、その擾乱を確率的に逆転し、元の量子状態を回復することが可能であることが知られている。さらに、こうした可逆的測定に限らず、他にも特殊な回復が可能な例が発見されており、これらはより一般的な回復過程の存在を示唆している。これらの過程に共通する特徴は、測定結果を記録したメモリの情報が消去されるという点である。本研究では、この「メモリの情報の消去」に着目し、情報消去を引き起こすような一般の操作について検討する。さらに、メモリを環境とみなすことで、システムの情報保護という観点から、一般的な量子誤り訂正との関連も議論する。以上により、量子情報の保持と制御に関する新たな視点を提供することを目指す。
量子もつれを遠隔地点へ配送する量子通信は、将来の量子インターネットの中核技術として期待されている。その長距離化には量子中継の導入が不可欠であり、これは量子もつれの生成・保持・接続といった複数の物理的操作に基づく複合的なシステムで構成される。本研究では、モデルベース・システムズ・エンジニアリングの手法に基づき、Matlab/Simulink上に量子もつれ配送システムの統合的なシミュレーション環境を構築した。現在は2地点間のもつれ生成を対象としているが、将来的な量子中継機能の実装も視野に入れて開発を進めている。さらに、本モデルはリアルタイム・ハードウェア・シミュレータと連携させることで、ハードウェア・イン・ザ・ループ型の実験環境への展開が可能であり、量子通信の社会実装を見据えたテストベッドの基盤としての活用を目指している。
物理的に実装可能な量子測定のクラスを明らかにすることは基礎的にも応用的にも重要な問題である。POVM(正値演算子値測度)測定は間接測定によって実装可能であり、ヒルベルト空間の数学的構造によって決まる最大のクラスである。しかし、ヒルベルト空間の構造ではなく、確率論的整合性を第一原理として仮定すれば、一般確率論の枠組みとして、非正値演算子値測度(N-POVM)測定を扱うことができる。N-POVM測定は量子論では記述できないため、物理的に実装可能であるとは考えられていなかった。本論文では、量子論において対象となる状態の定義域を限定した場合に、POVM測定と事後選択によってN-POVM測定を実装する構成的な方法を与える。また逆に、事後選択されたPOVM測定は、限定された定義域ではN-POVM測定とみなされることを示す。これらの結果は、一般確率論におけるN-POVM測定と事後選択との間に新しい...
量子力学誕生以来、大きな謎の一つとして議論されてきたのが単一光子の干渉現象である。この現象を理解するために数多くの研究がなされてきたが、光路の測定と干渉縞の測定とのトレードオフが最大の問題であった。しかし近年の研究では、光路に対して2準位系のプローブと弱く結合させることで、干渉パターンをほぼ壊さずに光路の情報を測定で得られることが分かってきた。例として中性子干渉計を用いた実験では、干渉計内部で1個の中性子が2つの経路で非局在することが示されている。
そこで本研究では、光干渉計内の二つの光路上でそれぞれ逆方向の偏光と弱く結合させた後に出力された単一光子の偏光を測定した。この方法は干渉をほぼ崩さずに、光路の観点から干渉計内部の物理現象の観測を可能にする。その結果、単一光子は二つの光路上で非局在や超局在を示すことが明らかとなった。
スペクトルギャップのある基底状態に対する近似基底状態射影(AGSP)の一つの構成法として、ハミルトニアンの多項式を用いる方法がある。しかし、ハミルトニアンのノルムが大きいと、無限系に特有の技術的困難が生じたり、多項式近似の計算効率が悪化したりする。 そこで、ノルムの小さい代替ハミルトニアンを導入するという有効ハミルトニアンのアイデアが用いられる。有効ハミルトニアンは、注目する平衡状態に対してエネルギー的に遠い領域の寄与をカットオフすることで定義される。 本研究では、元のハミルトニアンと有効ハミルトニアンのスペクトルが、平衡状態近傍においてほとんど変化しないことを厳密に証明する。特に、スペクトルギャップを持つ基底状態が、有効ハミルトニアンにおいてもスペクトルギャップ付き基底状態として保存されることを示す。
情報幾何は、パラメトライズされた確率分布族から構成された統計多様体に非Riemann幾何学的構造(Fisher計量とα接続)を導入し、主として統計的推論や機械学習の分析のための強力な枠組みである。我々は、情報幾何における勾配流を、解析力学、幾何光学、熱力学、Weyl幾何など、物理学の様々な分野と関連付けながら、様々な観点から研究してきた。特に、一般相対論的な枠組みにおいて、情報幾何の勾配流がWeylのゲージ対称性を持つことを明らかした。情報幾何と修正重力理論とは、計量と接続が独立している (Palatini形式として)...
両立不可能性(incompatibility)は,不確定性原理から示唆される非可換な2つの物理量に対する同時測定不可能性などに関連し,量子基礎において重要な概念とされてきた.本研究では,状態,測定,操作の両立不可能性を状態依存交換子によって特徴付け,量子二乗平均平方根測度及びダイヤモンド距離により定量化する新たな手法を提案する.そして,本提案手法によって定量化さてた両立不可能性が不確定性原理とどのような関係にあるのか議論する.
本研究では、視覚課題中のマウス脳スパイクデータに対して、非定常かつ非平衡な因果ダイナミクスを解析するため、状態空間キネティック・イジングモデルを新たに構築した。このモデルは、複数の単一神経活動の時系列から時変結合パラメータと外場をベイズ的に推定し、エントロピー生成に関わる「エントロピー流(bath entropy...
量子力学誕生から100年を迎えた2025年現在においても、不確定性原理に象徴される量子測定限界の実験と理論の両面での精密検証は重要な課題である。本発表では、ガウス波束基底を用いた連続量(位置・運動量)測定モデルを構築し、李・筒井形式と呼ばれる操作的・普遍的な不確定性関係の定式化を適用することで、測定誤差の積が伝統的な不確定性原理の下限と厳密に一致することを示した尾田欣也氏との結果を紹介する。最後に、今後の展望として、本研究同様のアプローチを時間とエネルギーや Bell‑CHSH 不等式へ適用する試みについて述べる。
ChatGPT に質問する
様々な物理現象において、相関関数は重要な指標となる。ところが、量子論における相関関数の定義には、物理量の同時測定不可能性に起因した任意性の存在が知られる。本研究では、測定(過程)によって定まる操作的相関と、物理量の代数的な要請を反映した代数的相関との間の関係について調べ、物理量の非可換性や測定による擾乱の指標等を用いることで、これらの差を評価した。特に、擬確率/量子化双対構造に基づくことで、「期待値」としての操作的・代数的相関の差のみならず、その背後に存在する(擬)確率分布の間の差について、これらの定量的な評価を上下から与えた。
また、本結果の応用として、単一系の時間相関に関する Leggett‒Garg...