量子基礎論の中心的なテーマの一つにベルの定理がある.この定理は,量子論,ひいてはこの世界の本質を理解するために,素朴な実在論や局所的な世界観が妥当かどうかを,科学的に議論する道を開いた.もう少し正確に言えば,アインシュタインをはじめとする多くの物理学者が重視した「実在」(すなわち,観測とは独立に対象が「存在する」こと)という考えに対し,自然科学として重要な前提である局所性,さらに測定の種類を自由に選べるという前提(いわゆる「自由意志」の存在)を仮定すると,ある不等式(ベルの不等式)が成立することが証明される.
重要なのは,この不等式が実験によって検証可能な形をしていることであり,しかも量子論はその不等式の破れを予言する点にある.1970年代後半から始まった実験的検証により,この破れは統計的に優位に確認されており,私たちの世界を局所実在論に基づいて説明することはできないという,き...
量子情報科学のここ数十年の目覚ましい発展により、量子力学が情報科学と極めて相性がよいことが判明してきた。実際、これまで実現が困難とされてきた情報処理タスクであっても、量子力学的な現象をうまく活用することで実現できる例が数多く見つかっている。では、なぜ量子力学は情報科学と相性がよいのだろうか。そして、量子情報科学の発展は、例えば量子コンピュータによる計算速度の向上といった実用的な価値を超えて、量子基礎論や量子物理学に対して、新たな科学的知見をもたらすことができるのだろうか。これらの問いに明確に答えることは現代の人類にとってはまだまだ荷が重く、今後の研究が解き明かしていくべき課題である。本チュートリアルでは、量子情報科学の基礎を概観した上で、「なぜ量子情報科学なのか」を(なんとなく)考えるきっかけを与え、本研究会での議論へとバトンをつなぎたい。
不確定性原理によれば、位置と運動量は同時に測定することはできない。また、コピー不可能性定理によれば未知の量子状態をコピーすることはできない。前者は位置の測定と運動量の測定が同時には実行できないこと、後者は二つの恒等変換が同時には実行できないことをあらわしている。このような同時に実行できない操作の組は、両立不可能な操作の組と呼ばれているが、この両立不可能性の存在は古典論にはない量子論の特徴である。本講演では、これら両立不可能な組がどのように特徴づけられるか、またどのように調べられるかについて、いくつかの知見を紹介する。
量子基礎論の中心的なテーマの一つにベルの定理がある.この定理は,量子論,ひいてはこの世界の本質を理解するために,素朴な実在論や局所的な世界観が妥当かどうかを,科学的に議論する道を開いた.もう少し正確に言えば,アインシュタインをはじめとする多くの物理学者が重視した「実在」(すなわち,観測とは独立に対象が「存在する」こと)という考えに対し,自然科学として重要な前提である局所性,さらに測定の種類を自由に選べるという前提(いわゆる「自由意志」の存在)を仮定すると,ある不等式(ベルの不等式)が成立することが証明される.
重要なのは,この不等式が実験によって検証可能な形をしていることであり,しかも量子論はその不等式の破れを予言する点にある.1970年代後半から始まった実験的検証により,この破れは統計的に優位に確認されており,私たちの世界を局所実在論に基づいて説明することはできないという,き...
量子情報科学のここ数十年の目覚ましい発展により、量子力学が情報科学と極めて相性がよいことが判明してきた。実際、これまで実現が困難とされてきた情報処理タスクであっても、量子力学的な現象をうまく活用することで実現できる例が数多く見つかっている。では、なぜ量子力学は情報科学と相性がよいのだろうか。そして、量子情報科学の発展は、例えば量子コンピュータによる計算速度の向上といった実用的な価値を超えて、量子基礎論や量子物理学に対して、新たな科学的知見をもたらすことができるのだろうか。これらの問いに明確に答えることは現代の人類にとってはまだまだ荷が重く、今後の研究が解き明かしていくべき課題である。本チュートリアルでは、量子情報科学の基礎を概観した上で、「なぜ量子情報科学なのか」を(なんとなく)考えるきっかけを与え、本研究会での議論へとバトンをつなぎたい。
量子情報科学のここ数十年の目覚ましい発展により、量子力学が情報科学と極めて相性がよいことが判明してきた。実際、これまで実現が困難とされてきた情報処理タスクであっても、量子力学的な現象をうまく活用することで実現できる例が数多く見つかっている。では、なぜ量子力学は情報科学と相性がよいのだろうか。そして、量子情報科学の発展は、例えば量子コンピュータによる計算速度の向上といった実用的な価値を超えて、量子基礎論や量子物理学に対して、新たな科学的知見をもたらすことができるのだろうか。これらの問いに明確に答えることは現代の人類にとってはまだまだ荷が重く、今後の研究が解き明かしていくべき課題である。本チュートリアルでは、量子情報科学の基礎を概観した上で、「なぜ量子情報科学なのか」を(なんとなく)考えるきっかけを与え、本研究会での議論へとバトンをつなぎたい。