Speaker
浩司 長岡
(電気通信大学)
Description
講演者の出身は物理でも数学でもなく工学畑(数理工学)であるが、かなり早い時期(1980年代後半)から量子情報の分野に関わるようになった。古典確率論にもとづいた理論体系として既に成熟の域にあった数理統計学や情報理論における基本的問題設定の多くが、量子系でもほぼそのまま意味を持つことを知り、にも関わらず、問題の解についてはきわめて限定的な結果しか得られていないという状況に興味を惹かれたのであった。その際に、統計的推測や情報伝送といった新しい観点のもとで量子力学にアプローチするということ自体の意義に加えて、講演者の場合は、古典系の諸結果を背後で支えるより基礎的あるいは横断的な理論的枠組が量子系ではどういう形を取っていくのだろうか、という問題意識が研究を進める上での大きな動機付けを与えた。そのような理論的枠組の代表として情報幾何学と情報スペクトル理論がある。前者は状態(確率分布)を点とする多様体上の微分幾何学を展開し、後者は状態の増大列の成す性質を最大限の一般性のもとで論じることを目指す。それらはある意味で対極的なアプローチであり、対象に対する全く異なる視点を提供する。本講演では、これら二つの理論の概要と量子系への拡張の試み、今後の展望(これは正直言ってよく分からないのだが)などについて、主として講演者自身の関心と研究にもとづいて解説する。また、量子情報理論の発展史において、これらの理論を含む物理学の「外」からの視点とそこでの研究成果の蓄積がいかに本質的に重要であったかという点についても論じたい。
Author
浩司 長岡
(電気通信大学)