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複数の測定を同時かつ正確に実行できないという測定の両立不可能性(同時測定不可能性)について,近年その強さを定量的に評価する研究が進められている.代表的な指標の一つに同時測定不可能性ロバストネス (Robustness of incompatibility, 以下 RoI) がある [1-3].これは,同時測定不可能な測定のペアにどの程度のノイズを加えると同時測定可能になるかを表す指標であり,ノイズに対する耐性として同時測定不可能性を評価するものである.
従来の RoI は全状態空間の利用を前提とする.しかし,実際の状況では状態が限られる場合もあり,そのような制限下での評価も重要である.実際,Heinosaari らは,ノイジーな Pauli $X$ および $Z$ 測定のペアに対して,従来のRoI では特異性が現れないノイズ領域においても,同時測定不可能性の判定に必要な状態数が変化することを示し,状態制限に基づく非自明な構造の存在を指摘した [4].
本研究では,この状態制限の観点を RoI へ導入し,新たに「状態制限下における同時測定不可能性ロバストネス (Robustness of incompatibility under state restriction)」を提案する.本指標は,制限された状態集合上での同時測定不可能性のノイズ耐性を定量化するものである.解析の結果,量子ビット系において, 従来の RoI では最も同時測定不可能性が強い測定のペアの一つである Pauli $X, Z$ 測定,すなわち相互不偏基底 (MUB) に対応するペア [3] よりも,特定の non-MUB 測定のペアの方が,状態制限下では高いノイズ耐性を示しうることを明らかにした.これにより,状態制限下で初めて現れる同時測定不可能性の非自明な階層構造を定量的に示す.
[1] E. Haapasalo, J. Phys. A: Math. Theor. 48, 255303 (2015).
[2] T. Heinosaari, J. Kiukas, and D. Reitzner, Phys. Rev. A 92, 022115 (2015).
[3] S. Designolle, M. Farkas, and J. Kaniewski, New J. Phys. 21, 113053 (2019).
[4] T. Heinosaari, T. Miyadera, and R. Takakura, Phys. Rev. A 104, 032228 (2021).