Speaker
Koki Ono
(University of Tokyo)
Description
熱力学第二法則は物理学において最も確立された基本原理の一つであり、どのような理論が自然を記述しうるのかを制約する原理としても機能する可能性がある。この問題を探る枠組みとして有用なのが一般確率論である。一般確率論は、古典論や量子論だけでなく、それらを超える仮想的な理論も含め、測定結果を確率的に記述するあらゆる理論を統一的に扱う。しかし、その多くは既知の物理理論から大きく逸脱しているため、熱力学との整合性などの原理によってその許容範囲を制限することが重要となる。
本発表では、一般確率論において、測定、フィードバック、情報消去を含む過程を包括的に扱う情報熱力学の枠組みを構築する[1]。特に、測定過程に伴うエントロピー変化に着目し、それが仕事の取り出しとどのように関係するのかを明らかにする。
具体的には、測定過程がエントロピー非減少性を満たす限り、一般確率論においても第二法則に反する仕事の取り出しは不可能であることを示す。また、一般確率論で用いられる複数のエントロピーの定義について、測定過程がこの性質を満たすための十分条件を与える。一方で、これらの条件を一部しか満たさない測定を用いて、正の仕事が取り出せる等温サイクルを具体的に構成する。これにより、一般確率論におけるエントロピーの定義や性質の違いが、第二法則との整合性に本質的な役割を果たすことを示す。
これらの結果は、一般確率論において測定が熱力学第二法則と整合するための条件を明らかにし、量子論の拡張として許容される理論に対して熱力学が課す制約を理解するための統一的な基盤を与える。
[1] K. Ono, S. Umekawa, and H. Tajima, arXiv:2605.12331 (2026).
Authors
Hiroyasu Tajima
(Kyushu university)
Koki Ono
(University of Tokyo)
舜 梅川
(Department of Physics, the University of Tokyo)