Aug 3 – 7, 2026
京都大学基礎物理学研究所
Asia/Tokyo timezone

高階量子計算と因果順序

Aug 6, 2026, 10:30 AM
40m
湯川記念館 パナソニック国際交流ホール (京都大学基礎物理学研究所)

湯川記念館 パナソニック国際交流ホール

京都大学基礎物理学研究所

京都市左京区北白川追分町
Invited talk Invited talk

Speaker

Prof. 美緒 村尾 (東京大学)

Description

通常の計算では、まず入力を決めて準備し、その入力に対して関数や演算を作用させることにより計算を行う。したがって、入力の準備と計算の間には、「入力 → 計算」という自然な因果順序が存在する。量子計算の保存と生成(store-and-retrieve)は、未知のオラクルとして与えられた量子計算に対して、この因果順序を逆転させることを目的とするタスクである。すなわち、入力状態をあらかじめ指定せずに量子計算を実行し、その結果を量子メモリに保存しておく。その後、後から決めた入力状態と、量子メモリに保存された量子状態を用いて、保存された計算の具体的な内容に依存しない操作のみによって、その入力に対する計算結果を再現する。このような手順により、通常は「入力 → 計算」の順に行われる処理を、実質的に「計算 → 入力」の順に実行することが可能となる。

もちろん、このような因果順序の逆転を実現するためには、何らかの追加リソースとタスクの緩和が必要となる。我々は、入力を指定しない量子計算(未知のオラクル)を複数回実行できる設定を考察し、対象となる計算がアイソメトリ演算であり、かつ近似的な再現を許す場合について、因果順序の逆転に必要なリソースを計算のクエリ回数として評価した。その結果、ユニタリ演算の場合とは異なり、アイソメトリ演算の場合には、量子計算をアイソメトリ推定によって推定して古典メモリに保存し、その後に読み出す方法よりも、より少ないクエリ回数で因果順序の逆転を実現できることを示した。

さらに、量子計算の保存と生成の考え方は、高階量子計算にも拡張することができる。高階量子計算とは、量子演算を別の量子演算、あるいは量子演算の関数へと変換する量子計算である。この観点から見ると、高階量子計算は、介入を伴う量子演算として捉えることができる。したがって、高階量子計算を量子状態へ保存し、後から再生することは、量子過程に対する遡及的な介入を実現することに対応する。そこで、確率的に成功する高階量子計算の保存と生成のタスクを考察し、その成功確率を導出することで、量子計算における遡及的介入に伴う因果順序の逆転のコストを解析した。

Author

Prof. 美緒 村尾 (東京大学)

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