Speaker
Dan Kondo
Description
量子色力学(QCD)は低エネルギー(赤外)領域において結合定数が強くなり、摂動論が破綻するため、理論的な理解が困難である。一方、超対称を持つQCD(SQCD)は、より理論的な制御が可能であり、そのダイナミクスは比較的よく理解されている。しかし現実のQCDに期待される振る舞いからは程遠い。現実のQCDにより近づけるためのアプローチとして、SQCDにアノマリー媒介機構(AMSB)を導入して超対称性を破る手法が提案されており、定性的にQCDの真空構造と一致することが示唆されてきた。しかしAMSBの変形パラメーターを小さい値から大きくしていく過程で、理論が連続的につながり得るのか、それとも相転移によって分断されているのかは、非自明な問題である。
我々は、この問題に対して、SQCD+AMSBの真空からカイラルラグランジアンとWessZumino項を導出し、squark, quark, gluino, gluonに対応する4種類の凝縮を計算した。その結果、パラメーターが小さい領域から大きい領域に連続でつながり得ることがわかった。またスカラーおよび擬スカラーの質量計算を行い、有限クォーク質量を含めた解析においても、現実のデータと定性的に整合する結果が得られた。以上により、SQCDからQCDの近似として、AMSBを用いた変形が有効であることを支持するような証拠を与えることができた。