本講演では、3次元空間と$D$次元の余剰次元空間が均一に膨張するようなインフレーションモデルを考える。$D+4$次元における宇宙論的摂動論を計算し、スペクトル指数とテンソル・スカラー比が次元によって変更されることを見る。さらに5つの有名なインフレーションモデルを解析し、Planck 2018の結果と比較する。
大統一理論やインフレーションモデルなどの多くのBSMモデルにおいて,対称性が破れるときに位相欠陥として宇宙ひもが生じることは古くから知られている.多くのモデルについてトポロジカルな観点からひもの安定性を調べる議論は盛んに行われているが,実際に安定でないひもが崩壊する過程についての議論はあまりなされていない.本講演では$\mathrm{SU}(2) \times \mathrm{U}(1) \to \mathrm{U}(1) \times \mathrm{U}(1) \to \mathrm{U}(1)' \to 1$というシナリオで形成される2種類のひもについて,モノポール対を生成して崩壊する過程やそれにともなうひもの内部を走る磁場のふるまい等を解析する.
素粒子標準模型におけるクォーク・レプトンセクターには,世代構造の起源の謎と共に,世代間に存在する指数関数的な質量階層性の問題や,フレーバー混合の混合角を決める動的メカニズムについての謎など,いわゆるフレーバー構造の謎が存在している.我々はこれまで,点状相互作用を持つ5次元の余剰次元模型を提唱し,この余剰次元模型によってこれらフレーバー構造の問題が解決しうることを示してきた.しかし,過去の研究では,フレーバー構造の問題解決に重要な役割を果たす点状相互作用の座標変数をフリーパラメータとして取り扱っていたため,フレーバー構造問題の動的な解決には至っていなかった.本発表では,点状相互作用の座標を余剰次元のカシミア・エネルギー最小化から決定される動的変数として取り扱った解析手法を紹介し,クォークのフレーバー構造が,余剰次元模型のカシミア・エネルギーの最小化から動的に解決できることを示す.
本研究では高エネルギーに存在するVector Like Quarkの1-loop補正によって生成されるColeman–Weinbergポテンシャルをモジュラーフレーバー対称性を指導原理に構築する。さらにモジュライ固定とそれに伴うインフレーション、アクシオン模型としての可能性を検証する。
QCDアクシオンは強いCP問題を解決する有力なメカニズムである。多くの研究では崩壊定数はfa ≳ 10^9 GeV ほどの大きな値のアクシオン模型が研究されている。
しかし近年、$f_a\sim1\,{\rm GeV}$でもアクシオン模型が実現できる可能性が指摘された。
我々の研究ではこのアクシオン模型に対して、KTeV実験で測られている$K_L\rightarrow \pi^0\pi^0e^+e^-$の崩壊過程を調べることで厳しい制限をつけた。
At low energies, the (anti-)neutrino pairs are produced and annihilated due to the effect of the Majorana mass term. To investigate this effect, we studied the time variation of the lepton number density distribution. As an initial state, a neutrino wave packet is prepared near the spacetime origin. We studied how the lepton number density distribution corresponding to the state changes with...
Axions are one of the candidates for dark matter in the Universe. One way to search for axions is through gamma-ray observation. If there exist axions in the Universe, gamma rays emitted from some sources can be converted into axions, vice versa, by magnetic fields in several astrophysical environments. Constraints on axion mass and its coupling to photons have been given by looking for its...
5次元squashed Kaluza-Kleinブラックホール解は地平線近傍で5次元的に振舞うが、無限遠方ではS$^1$コンパクト化された余剰次元を伴う有効的4次元時空に漸近する。そこで、squashed Kaluza-Klein解を現実的な高次元時空モデルの候補と考えて、この時空中における試験荷電粒子の運動を議論した。さらに、束縛軌道における近点移動の振舞いを調べて、近い将来の観測による余剰次元や天体の電荷の検出可能性を議論した。
大統一理論は、標準模型のゲージ群を高エネルギーで一つの対称性に統一する試みである。しかし最小SU(5)モデルでは、陽子寿命の理論予測が実験下限を大きく下回り、ゲージ結合定数も正確には一点に収束しないという問題がある。本研究では、これらの課題を解決するために、通常のカイラルな3世代5*+10表現に加え多数の5および10表現の重いフェルミオンを高エネルギーで導入する。解析の結果、十分な数のフェルミオンを導入することでゲージ結合定数は一点で統一され、陽子崩壊も実験的制限を十分に満たすまで抑制されることが示された。
多重臨界点原理とは、「理論のパラメータは複数の真空状態が同じエネルギーを持つ点」に選ばれるという原理であり、ヒッグス粒子発見前にその質量を予言していた。本講演では、暗黒物質候補粒子を含むモデルTwo Higgs doublet model with a complex singlet scalar(2HDMS)における多重臨界点原理の適用可能性について検討する。さらに、多重臨界点原理を課した上で暗黒物質の直接探索実験や観測された残存量からもたらされるパラメーターの制約についても議論する。
複素3重項スカラー場を含むヒッグス3重項模型(HTM)では、タイプⅡシーソー機構によってニュートリノ質量を説明することができる。また、HTMは電弱ρパラメーターがツリーレベルで1からずれるという特徴を持つ拡張ヒッグス模型であり、電弱セクターでは標準模型とは異なるくりこみが必要となる。本研究では、HTMにおけるくりこみ処方を構築し、125 GeVヒッグスボソンの崩壊過程に対する輻射補正効果を評価した。さらに、付加的ヒッグスボソンのループ効果や特徴的な崩壊過程の振る舞いを利用し、他の模型との識別可能性についても議論する。
我々は、フラックスコンパクト化された6次元 U(1) 理論の下で、擬南部ゴールドストーン暗黒物質を議論する。フラックスコンパクト化された理論では、ウィルソンライン(WL)スカラーがトーラスの並進対称性に対する南部ゴールドストーンボソンとみなされることが知られている。我々は、WLスカラーを暗黒物質とみなし、非相対論的極限の下で、暗黒物質と原子核の散乱弾面積が移行運動量の2乗に比例することを確認する。また、熱的残存量を再現可能なパラメータ領域を示す。
本発表では、自発的なCP対称性の破れによって強いCP問題を解決するNelson-Barr模型を再検討する。従来この模型は高次演算子やループ効果で強いCP角が再び生成される「クオリティ問題」に加え、宇宙論的なドメインウォール問題が存在することが課題とされてきた。今回、近似的な大域的対称性を導入することによるクオリティ問題の解決を提案するとともに、再加熱温度が高い場合にもドメインウォール問題を避ける機構を提案する。
宇宙ひもを構成する場が軽い粒子と結合をもつ場合、宇宙ひもからの粒子放出を考えることができる。我々は、特定の相互作用項のみに着目した先行研究の議論を拡張し、素粒子模型から宇宙ひもと粒子の有効結合を網羅的に得る手法を提案する。さらにこの手法を、標準模型とgauge kinetic mixingを通して結合している$U(1)$ヒッグス模型での宇宙ひもに適用し、先行研究で見落とされていた粒子放出の寄与や模型の結合定数への依存性を示す。また、宇宙ひものcuspでの対消滅による粒子放出と比較し、宇宙観測からの制限についても議論する。