学位取得後、コライダー物理に足を踏み入れ、これまで一貫してLHCやILC等のコライダー物理に関する研究をしてきました。講演を通して、自分自身の研究を重ねながら過去を振り返り、現在の位置を確認し、そしてコライダー物理の未来について皆さんと考える機会になればと思います。
The neutron is a unique particle, which is a smallest nucleus, has no charge, and sensitive to four interactions: strong, electromagnetic, weak, and gravity. Thanks to the features, neutrons have been used in a variety of fundamental physics research. In this talk, fundamental physics experiments using neutrons are reviewed.
The neutron lifetime is an important parameter for elemental...
フレーバー模型に対する従来の分析では理論に含まれるパラメータを現実的な時間で最適化するため、探索領域をある程度制限する手続きが一般的である。本研究では生成AIの一種である拡散モデルを用いて、模型の詳細によらず適用可能な解析手法を提案する。特に具体例として$S_{4}^\prime$モジュラーフレーバー模型を取り上げ、クォーク質量・CKM行列・Jarlskog不変量を再現するニューラルネットワークを構築する。 訓練されたネットワークを用いて新しいパラメータを生成することにより、解析的評価が困難な領域における様々なパラメータ解を発見した。更に同模型において自発的なCP対称性の破れを見出すなど、パラメータ解の候補を機械が生成するという逆問題的アプローチを活かすことで、フレーバー模型の予言が俯瞰的に検討されうることを議論する。本発表の参考文献はarXiv:2503.21432...
Pseudo Nambu-Goldstone (pNG) bosons can play important roles in particle physics, such as being a light dark matter (DM), the QCD axion to solve the strong CP problem, and so on. I point out that such a pNG boson is naturally realized by the finite modular symmetry, which may originate from the geometry of extra dimensions in the superstring models. An accidental global U(1) symmetry arises...
PeV-scale supersymmetry is an attractive framework that can address the origin of dark matter, scale hierarchy and coupling unification.
However, the sparticles mediate baryon number violation caused by higher-dimensional operators, rendering the proton lifetime below the Super-Kamiokande limit.
We point out that flavor symmetry, originally introduced to explain the flavor structure of the...
The $t$-channel singularity is a divergence in the scattering amplitude which occurs when a stable particle propagating in t-channel scattering process becomes an on-shell state. Such situations appear either in the system of collider experiments or in the context of the cosmological particle production. No scheme which is generally applicable is known. In this work, we propose a new...
超対称カイラルゲージ理論に基づくアクシオン模型について議論する。この模型では、カイラルゲージ理論の非摂動効果によってPeccei-Quinn対称性が破られることでアクシオンが現れる。加えて超対称性の性質により、カイラルゲージ理論の非摂動ダイナミクスを解析的に解くことが出来る。またこの模型をSU(5)大統一模型に適合させて、その現象論について議論する。
共形不変性とスケール不変性は異なるということを素粒子論で棄却された(棄却されていない)アイディアを元に議論する。
この講演では、一般相対論を含む曲がった時空では、通常の意味での物質のエネルギーは一般には保存しないことを膨張宇宙などの実例を挙げて示す。重力場のエネルギーを考えることで保存則を満たすエネルギーを定義する試みはネーターの第2定理によりうまくいかないことを議論する。曲がった時空にはエネルギーに変わる保存量が常に存在することを示し、その物理的意味に関して検討する。
クォーク閉じ込めのダイナミクスの理解は長年の問題である.解析的に出来ることとして,閉じ込めを示す簡単な似た模型を調べてみる,という試みがよくなされる.
この講演では,この一つの方向性として,「コンパクト化により,4次元$SU(N)$ Yang-Mills理論を閉じ込めを保ちつつ弱結合理論に変形し,半古典的に閉じ込め真空を記述する方法」について解説する.具体的には,$\mathbb{R}^3\times S^1$におけるmonopole dilute gasによる閉じ込めと,$\mathbb{R}^2 \times T^2$におけるcenter-vortex dilute gasによる閉じ込めについて見ていく.それらのレビューののち,2つの方法をつなぐ最近の仕事も紹介する.
't Hooft Polyakov モノポールは標準模型には存在しない。しかしChoとMaisonは、標準模型の電弱セクターに球対称な磁気モノポール解が存在することを発見した。この Cho-Maison モノポールは空間原点でエネルギーが発散してしまうなど理論的に分かっていないことが多い。そこで高エネルギーの理論において構成される't Hooft Polyakov モノポールが、低エネルギー有効理論における Cho-Maison モノポールとして理解されるシナリオを解析した。
本講演では、3次元空間と$D$次元の余剰次元空間が均一に膨張するようなインフレーションモデルを考える。$D+4$次元における宇宙論的摂動論を計算し、スペクトル指数とテンソル・スカラー比が次元によって変更されることを見る。さらに5つの有名なインフレーションモデルを解析し、Planck 2018の結果と比較する。
大統一理論やインフレーションモデルなどの多くのBSMモデルにおいて,対称性が破れるときに位相欠陥として宇宙ひもが生じることは古くから知られている.多くのモデルについてトポロジカルな観点からひもの安定性を調べる議論は盛んに行われているが,実際に安定でないひもが崩壊する過程についての議論はあまりなされていない.本講演では$\mathrm{SU}(2) \times \mathrm{U}(1) \to \mathrm{U}(1) \times \mathrm{U}(1) \to \mathrm{U}(1)' \to 1$というシナリオで形成される2種類のひもについて,モノポール対を生成して崩壊する過程やそれにともなうひもの内部を走る磁場のふるまい等を解析する.
素粒子標準模型におけるクォーク・レプトンセクターには,世代構造の起源の謎と共に,世代間に存在する指数関数的な質量階層性の問題や,フレーバー混合の混合角を決める動的メカニズムについての謎など,いわゆるフレーバー構造の謎が存在している.我々はこれまで,点状相互作用を持つ5次元の余剰次元模型を提唱し,この余剰次元模型によってこれらフレーバー構造の問題が解決しうることを示してきた.しかし,過去の研究では,フレーバー構造の問題解決に重要な役割を果たす点状相互作用の座標変数をフリーパラメータとして取り扱っていたため,フレーバー構造問題の動的な解決には至っていなかった.本発表では,点状相互作用の座標を余剰次元のカシミア・エネルギー最小化から決定される動的変数として取り扱った解析手法を紹介し,クォークのフレーバー構造が,余剰次元模型のカシミア・エネルギーの最小化から動的に解決できることを示す.
本研究では高エネルギーに存在するVector Like Quarkの1-loop補正によって生成されるColeman–Weinbergポテンシャルをモジュラーフレーバー対称性を指導原理に構築する。さらにモジュライ固定とそれに伴うインフレーション、アクシオン模型としての可能性を検証する。
QCDアクシオンは強いCP問題を解決する有力なメカニズムである。多くの研究では崩壊定数はfa ≳ 10^9 GeV ほどの大きな値のアクシオン模型が研究されている。
しかし近年、$f_a\sim1\,{\rm GeV}$でもアクシオン模型が実現できる可能性が指摘された。
我々の研究ではこのアクシオン模型に対して、KTeV実験で測られている$K_L\rightarrow \pi^0\pi^0e^+e^-$の崩壊過程を調べることで厳しい制限をつけた。
At low energies, the (anti-)neutrino pairs are produced and annihilated due to the effect of the Majorana mass term. To investigate this effect, we studied the time variation of the lepton number density distribution. As an initial state, a neutrino wave packet is prepared near the spacetime origin. We studied how the lepton number density distribution corresponding to the state changes with...
Axions are one of the candidates for dark matter in the Universe. One way to search for axions is through gamma-ray observation. If there exist axions in the Universe, gamma rays emitted from some sources can be converted into axions, vice versa, by magnetic fields in several astrophysical environments. Constraints on axion mass and its coupling to photons have been given by looking for its...
5次元squashed Kaluza-Kleinブラックホール解は地平線近傍で5次元的に振舞うが、無限遠方ではS$^1$コンパクト化された余剰次元を伴う有効的4次元時空に漸近する。そこで、squashed Kaluza-Klein解を現実的な高次元時空モデルの候補と考えて、この時空中における試験荷電粒子の運動を議論した。さらに、束縛軌道における近点移動の振舞いを調べて、近い将来の観測による余剰次元や天体の電荷の検出可能性を議論した。
大統一理論は、標準模型のゲージ群を高エネルギーで一つの対称性に統一する試みである。しかし最小SU(5)モデルでは、陽子寿命の理論予測が実験下限を大きく下回り、ゲージ結合定数も正確には一点に収束しないという問題がある。本研究では、これらの課題を解決するために、通常のカイラルな3世代5*+10表現に加え多数の5および10表現の重いフェルミオンを高エネルギーで導入する。解析の結果、十分な数のフェルミオンを導入することでゲージ結合定数は一点で統一され、陽子崩壊も実験的制限を十分に満たすまで抑制されることが示された。
多重臨界点原理とは、「理論のパラメータは複数の真空状態が同じエネルギーを持つ点」に選ばれるという原理であり、ヒッグス粒子発見前にその質量を予言していた。本講演では、暗黒物質候補粒子を含むモデルTwo Higgs doublet model with a complex singlet scalar(2HDMS)における多重臨界点原理の適用可能性について検討する。さらに、多重臨界点原理を課した上で暗黒物質の直接探索実験や観測された残存量からもたらされるパラメーターの制約についても議論する。
複素3重項スカラー場を含むヒッグス3重項模型(HTM)では、タイプⅡシーソー機構によってニュートリノ質量を説明することができる。また、HTMは電弱ρパラメーターがツリーレベルで1からずれるという特徴を持つ拡張ヒッグス模型であり、電弱セクターでは標準模型とは異なるくりこみが必要となる。本研究では、HTMにおけるくりこみ処方を構築し、125 GeVヒッグスボソンの崩壊過程に対する輻射補正効果を評価した。さらに、付加的ヒッグスボソンのループ効果や特徴的な崩壊過程の振る舞いを利用し、他の模型との識別可能性についても議論する。
我々は、フラックスコンパクト化された6次元 U(1) 理論の下で、擬南部ゴールドストーン暗黒物質を議論する。フラックスコンパクト化された理論では、ウィルソンライン(WL)スカラーがトーラスの並進対称性に対する南部ゴールドストーンボソンとみなされることが知られている。我々は、WLスカラーを暗黒物質とみなし、非相対論的極限の下で、暗黒物質と原子核の散乱弾面積が移行運動量の2乗に比例することを確認する。また、熱的残存量を再現可能なパラメータ領域を示す。
本発表では、自発的なCP対称性の破れによって強いCP問題を解決するNelson-Barr模型を再検討する。従来この模型は高次演算子やループ効果で強いCP角が再び生成される「クオリティ問題」に加え、宇宙論的なドメインウォール問題が存在することが課題とされてきた。今回、近似的な大域的対称性を導入することによるクオリティ問題の解決を提案するとともに、再加熱温度が高い場合にもドメインウォール問題を避ける機構を提案する。
宇宙ひもを構成する場が軽い粒子と結合をもつ場合、宇宙ひもからの粒子放出を考えることができる。我々は、特定の相互作用項のみに着目した先行研究の議論を拡張し、素粒子模型から宇宙ひもと粒子の有効結合を網羅的に得る手法を提案する。さらにこの手法を、標準模型とgauge kinetic mixingを通して結合している$U(1)$ヒッグス模型での宇宙ひもに適用し、先行研究で見落とされていた粒子放出の寄与や模型の結合定数への依存性を示す。また、宇宙ひものcuspでの対消滅による粒子放出と比較し、宇宙観測からの制限についても議論する。
核子の構造を調べる上で、核子形状因子は非常に良いプローブである。核子形状因子は、長きにわたり、実験と理論の両面から研究されてきたにも関わらず、陽子半径パズルや核子質量・スピンの起源、核子ニュートリノ反応など、核子構造の多くは未だ解明されていない。
本講演では特に核子の軸性構造に着目して、その概観と我々の最近の格子QCD計算の結果を報告する。具体的には、3つの核子形状因子(軸性、誘導擬スカラー、擬スカラー)に着目し、格子QCDを活用した計算方法および我々の計算結果についてまとめる。さらに計算で得られた格子QCDデータを基に、PCAC関係式とそれに付随する低エネルギー関係式(一般化されたゴールドバーガー・トライマン関係式やパイオン極模型など)について議論する。
We investigate the QCD phase diagram with a flavor universal axial chemical potential induced by a rolling inflaton coupled to fermions in the de Sitter spacetime. We clarify the (first-order) critical line and its critical point as a function of Hubble parameter and axial chemical potential, by employing an effective description of chiral symmetry breaking within the framework of the...
近年、コライダー物理などの素粒子論研究で培われた散乱振幅の手法を古典重力の問題、特に重力的2体運動と重力波放射の問題へ応用することが盛り上がっている。このプログラムは最先端の重力波精密予言やブラックホールへの新たな洞察など既に大きな成功を導いている。本講演ではこのプログラムを更に推し進め、ブラックホールの合体を散乱振幅によって記述・計算する新たなアプローチを提案する。基本となるアイデアはブラックホールを粒子と捉え、その合体を粒子の融合過程と見ることである。現代の散乱振幅手法と組み合わせ、古典手法ではスピンの2次までしか知られていなかった、合体後ブラックホールのスピンの全次数を含む重力メモリ波形を計算する。また、初期ブラックホールの質量比が大きい極限において、本手法が古典手法と等価な重力波波形を与えることを具体的にみる。
原始ブラックホール(Primordial Black Hole, PBH)は、近年注目されている暗黒物質候補の一つである。PBHは初期宇宙において、大きな密度揺らぎが生じることで生成される。これまで提案されてきた多くのPBH生成のシナリオでは、生成された過密領域が球対称であることが仮定されているが、実際には球対称性からのずれがPBH形成に与える影響は未解明な点が多い。本講演では、従来とは異なる新しいPBH生成機構について議論する。この機構の大きな特徴は、形成される過密領域が球対称性を自然に保持する点にある。さらに、この新しいPBH生成機構を実現する具体的な拡張ヒッグス模型を構築し、そこから予言されるPBHが、すばる望遠鏡やOGLE(Optical Gravitational Lensing Experiment)で観測されているマイクロレンズ現象による増光イベントを説明できることを示す。
近年、深層学習や生成モデルをはじめとする AI 技術は、画像・言語処理のみならず数値科学計算にも急速に浸透している。本講演ではその潮流を概観し、まずニューラルネットワークの基本概念を平易に紹介する。続いて格子 QCD における現在の問題点、そしてサンプリングの高速化とバイアス低減、物理量抽出の高精度化、正則化フロー等や生成モデルによる新しいアンサンブル生成法を議論する。富岳ネクストを目指したコード開発についても時間が許せば議論する。本講演は J. Phys. Soc. Jpn. 94, 031006 (2025)に基づく。
DESI 等の最近の宇宙観測により、ダークエネルギーの時間発展が $2\sigma$-$4\sigma$ 程度で示唆されており、ダークエネルギーの性質に迫る絶好の機会と考えられます。現象論的なフィッティングによると、ある時刻で急に状態方程式が変わるような過渡的・遷移的な特徴がデータを説明できます。我々は、そのような特徴をもったクインテッセンス模型を構築し、その観測的示唆を議論します。このシナリオでは、スカラー場がある時刻で急に振動を始める事により、状態方程式が急に変わります。そのような模型では自然にタキオン不安定性が発達し、更に状態方程式が修正を受けるため、数値格子計算によって状態方程式を明らかにします。更に、タキオン不安定性の副産物として重力波が生成されるので、将来の宇宙観測への示唆を議論します。
We propose a Grassmann variant of the recently-proposed Clifford-augmented matrix product state (CA-MPS) algorithm for efficiently simulating fermionic quantum systems. By incorporating Clifford circuits into Grassmann MPS to locally reduce the entanglement entropy, our method enhances the expressive power of traditional fermionic tensor network algorithms. Applied to various benchmark...
We investigate the role of the Higgs field as a fundamental scalar in the Standard Model within the framework of modular inflation models, where a modulus field acts
as the inflaton and its interactions are governed by an underlying modular symmetry. In
general, the Higgs field can participate in the dynamics of modular inflation, leading to a
two-field inflationary system—termed...
Considering (unstable) Riemann space-time whose tangent space possesses NL
SUSY structure specified by the Grassmann coordinates ψα for SL(2,C) and the
ordinary Minkowski coordinates xa for SO(1,3). we can construct the unified vier
bein ˜ eaµ which enables the ordinary geometric argument of the general relativity(GR)
principle and obtain straightforwardly a new Einstein-Hilbert(EH)-type...
We study the CP-even neutral Higgs boson decays $h \to c \bar{c}, b \bar{b}, b \bar{s}, \gamma \gamma, g g$ in the Minimal Supersymmetric Standard Model (MSSM) with general quark flavor violation (QFV) due to squark generation mixings, identifying the h as the Higgs boson with a mass of 125 GeV. We compute the widths of the h decays to $c \bar c, b \bar b, b \bar s (s \bar b)$ at full...
本研究では新たなレプトンフレーバー非保存(CLFV)過程として、true muoniumのCLFV崩壊 $(\mu^+ \mu^-)\to \mu^\pm e^\mp$...
In the standard model, the mechanism for gauge symmetry breaking and the theoretical origin of the Higgs boson remains unclear. Yang-Mills theories in higher dimensions are good candidates to address these issues.
We have constructed a Yang-Mills theory with extra dimensions of two-dimensional sphere. In this model, compared to conventional models such as those with $S^1$ and $T^2$,...
We clarify selection rules of conjugacy classes of several finite discrete groups where we deal with both gauged and ungauged cases.
We find that the selection rules enjoy finite Abelian or non-Abelian discrete symmetries originating from the inner and/or outer automorphism of underlying discrete groups.
Since the selection rules of conjugacy classes do not obey conventional group-like...
将来の様々な実験で検証が可能な電弱バリオン数生成は有力かつ興味深いシナリオである。
特に、電弱バリオン数生成に必要な新しいCPの破れは既存および将来の電気双極子モーメント実験で探索が可能である。
本講演では、two Higgs doublet modelにおける電弱バリオン数生成に重要なCPの破れを分類し、バリオン数生成について最小なセットアップで予言される避けられない電気双極子モーメント制限について議論する。
ラージN極限での格子ゲージ理論は, ツイスト境界条件を課した0次元行列模型(Twisted Eguchi-Kawai模型)と等価であることが示唆されている. しかし, ゲージ理論との等価性を保証するZN対称性を保つためにはツイスト境界条件のパラメータのチューニングを行いながらラージNを取る必要がある. 本講演では, 重い随伴表現フェルミオンによりZN真空が安定化された模型を提案し, その模型における真空構造と物理量の計算結果を紹介する. さらに, この模型を拡張することで,コンパクト時空上のSU(N)ゲージ理論に対応する1次元行列模型を構成し,QCD閉じ込め相の連続性を行列模型のレベルで示す.
本研究では、TeVスケールの質量を持つ右巻きニュートリノを導入したシーソー機構による標準模型の拡張に着目する。
TeVスケールという比較的軽い質量であることから、右巻きニュートリノは実験的検証の可能性を持ち、魅力的である。
一方で、これまでの実験的探索から、左巻きニュートリノとの混合角 $\Theta_{\alpha I}~(\alpha = e, \mu, \tau;~I = 1\text{-}N)$~(N:右巻きニュートリノの世代数) には制限が課されており、とくにニュートリノの放出を伴わない二重ベータ崩壊により、電子型混合角 $\Theta_{e I}$ に強い上限が与えられている。
本発表では、レプトン数を2単位破る$\mu^\pm \mu^\pm \rightarrow W^\pm W^\pm$過程に焦点を当てる。
従来,混合角$\Theta_{\alpha...
ゴールドスティーノとは、対称性が自発的に破れた際に現れる質量0の南部・ゴールドストーン粒子の超対称パートナーである中性ワイルフェルミオンである。重力を超対称性に含ませると、超対称性が局所的対称性となり、重力子の超対称パートナーであるスピン3/2のグラビティーノが現れる。これは局所的超対称性変換のゲージ場として考えることができ、超対称性が自発的に破れるとグラビティーノがゴールドスティーノを吸収し、質量を得る。非最小な超対称模型(SSM)を考え、2
つの超対称セクターが独立に破れることを仮定すると、質量を持った擬-ゴールドスティーノが物理的な自由度として現れ、ダークマターの候補として考えられる。本研究では、擬-ゴールドスティーノがダークマターである可能性を探るためにγ線への崩壊を考え、その寿命およびγ線のエネルギースペクトルを数値的に解析した。擬-ゴールドスティーノの主要な崩壊モードは...
QCDアクシオンはダークマターの有力候補であるが、等曲率揺らぎやドメインウォールなど宇宙論的な問題がある。本発表では通常考えられるQCDの非摂動効果によるポテンシャルに加え、スカラー場とPeccei-Quinn場の混合項により生じる時間依存するポテンシャルを考える。QCD相転移よりも高いスケールにおいても大きなポテンシャルをもつため、ドメインウォールの進化やミスアラインメント機構によるアクシオンの生成量が非自明に変化する。一方、低いスケールでスカラー場が振動した後、この時間依存するポテンシャルは抑制されるので、パラメータの微調整なしに強いCP問題を解くことができる。本発表では特に、追加のポテンシャルが大きなドメインウォール数を持つときに、ドメインウォールが崩壊可能な条件とダークマターを説明できるパラメータ領域について議論する。
標準模型に右巻きニュートリノとSU(2)スカラー二重項を新たに導入することで、ダークセクターにおける輻射補正を通じて左巻きニュートリノの質量を生成することが可能である。この理論的枠組みはScotogenic模型と呼ばれ、ニュートリノ質量の起源を説明するだけでなく、右巻きニュートリノの崩壊過程を通じて物質・反物質非対称の問題を説明可能であることが知られている。本研究では、最も軽い右巻きニュートリノよりもスカラー二重項の質量が大きい場合に、スカラー二重項が右巻きニュートリノおよびレプトン二重項へ崩壊することでレプトン数が生成されるシナリオを検討した。本シナリオにおいて生成されるバリオン数を算出し、また観測されているバリオン非対称を再現し得る右巻きニュートリノおよびスカラー二重項の質量、それらの結合定数に関するパラメータ領域の存在を調べた。
Recent pulsar timing array experiments have reported signals of a stochastic gravitational wave background. If metastable cosmic strings, which can explain this observation well, truly exist, they could serve as compelling evidence for physics beyond the Standard Model. Metastable cosmic strings form structures known as segments, which consist of cosmic strings connecting monopole–antimonopole...
We discuss the application of information thermodynamics to cosmological first-order phase transitions. When the bubble wall can distinguish particles in the plasma based on their physical properties—such as their mass, CP charge, etc.—its interaction with the plasma can be interpreted as a “measurement” of those properties and a subsequent “feedback” based on the outcomes. Therefore, the...
KM3NeT/ARCAによって検出された超高エネルギーのミューオンイベント「KM3‑230213A」は、およそ220 PeVのエネルギーを持つニュートリノによるものと解釈され、大きな注目を集めている。しかし、この事象に対応するガンマ線信号は観測されておらず、またIceCubeをはじめとする他のニュートリノ観測装置による追検出もないことから、標準模型に基づく解釈には困難がある。本発表では、この事象の起源として提案されているステライルニュートリノによるシナリオを紹介する。特に、右巻きニュートリノが標準模型のニュートリノと微小に混合することで、検出器においてミューオンイベントとして観測される可能性に着目する。また、通常のニュートリノとは異なり、こうした粒子はガンマ線を伴わず、他の観測装置では検出されにくいという特徴についても議論する。本研究は、宇宙ニュートリノ観測の枠組みを拡張する可能性を...
隠れた対称性の自発的破れに由来する擬南部ゴールドストンボソン(pseudo-Nambu-Goldstone boson, pNGB)は、対称性の構造により標準模型粒子との相互作用が自然に抑制されることから、最新の暗黒物質(DM)直接検出の観測制限とも高い整合性を持つため有望なDM候補である。これまでに提案されたpNGB DM模型では、DMの安定性はZ2またはU(1)にもとづいていた。(もしくは長寿命の崩壊する暗黒物質が議論されてきた。)本講演で提案するZ3で安定化するpNGB DMは半対消滅過程を特徴とするため新たなパラメタ空間を許容する。これまで、pNGB...
Dark matter is a subject of active research across many disciplines. In particle physics approach, efforts are ongoing to expand the range of theoretical scenarios and refine predictions motivated by upcoming observations. Recently, cross-disciplinary approaches have been increasingly studied, integrating insights from atomic nuclei, astrophysics, and other fields to propose novel search...
Large lepton flavor asymmetries with zero total lepton asymmetry could be generated in the Early Universe. They are loosely constrained by current observations, being washed out at MeV temperatures by neutrino oscillations. We show that large lepton flavor asymmetries open up a new parameter space for sterile neutrino dark matter, consistent with the X-ray line searches and structure...
タイプIシーソーラグランジアンに基づく熱的レプトジェネシスを再考し、将来のニュートリノ実験からの制約について議論する。特に、ニュートリノレス二重ベータ崩壊からの影響に注目する。フレーバー効果を記述できる密度行列方程式を数値的に解くことで、レプトジェネシスに必要な右巻きニュートリノの質量の下限を導き、それを最も軽いニュートリノ質量とニュートリノレス二重ベータ崩壊に関わるニュートリノの有効マヨラナ質量からなる平面上の等高線として示す。さらに、その等高線の射影を取ることで、右巻きニュートリノ質量の下限を有効マヨラナ質量の関数として図示する。
本講演では,標準模型の最小の拡張によってバリオン数非対称性問題を解決する新たなシナリオについて議論する.このシナリオでは,全てのサハロフの条件がCPを破る電弱スファレロンの脱結合の過程を通じて同時に満足される.電弱スファレロン過程におけるCPの非対称性のソースとして,標準模型にCPを破る次元6演算子を加えた有効理論を考える.そして,近い将来の電子の電気双極子モーメントの観測によって我々のシナリオが検証できることを示す.本講演の内容は以下の論文に基づく[https://arxiv.org/abs/2505.09984].
Aoki-Kanemura-Setoモデル(AKSモデル)は、ニュートリノ質量、ダークマター、バリオン数非対称性を同時に説明しうる輻射シーソー模型であるが、オリジナルの模型で生成バリオン数の評価は未だなされていない。本講演では生成バリオン数をトップクォーク輸送シナリオとWKB近似法に基づいて計算し、既存の実験データと3つの未解決諸現象を説明するベンチマークポイントを明らかにするとともに、将来の様々な実験を用いて多角的に検証する可能性を議論する。
次世代の加速器実験として円形の大型電子陽電子衝突型加速器が提案されている。この実験ではさまざまなプロセスに対して精密な測定が可能である。今回は精密測定を用いた新物理模型の探索について発表する。
次世代のコライダーは、ヒッグスファクトリー実験を実現可能とする電子・陽電子コライダーであるべきだという考え方は、近年、広く高エネルギー物理学者の間で共有されている。その実装としては、従来より日本のコミュニティがリードして推進してきた ILC に代表される線形コライダー方式と、円形コライダー方式が挙げられる。
とくに近年は円形コライダーに関する研究の進展が顕著であり、CERN における LHC 後の基幹コライダー計画を検討する中で、欧州では FCC-ee を中心とした議論が進んでいる。2025年3月には Feasibility Study が完了し、そのレポートがとりまとめられた。現在、「欧州戦略改訂」の手続きが進行中であり、グローバルな枠組みで議論が活発に行われる。他方、中国における CEPC 計画も...
本講演ではヒッグス多体生成過程の効果を考慮した新しいヒッグスポータル暗黒物質シナリオを提案する。ヒッグス粒子質量の数百倍ほどの超高エネルギーでの散乱過程において、Higgsplosion と呼ばれる ${\cal O}(100)$ 個ほどの多体のヒッグス粒子が顕著に生成されるという仮説が提唱されており、本シナリオではこの現象を考慮に入れたヒッグスポータル暗黒物質模型を考える。Higgsplosion を考慮しない典型的なシナリオでは期待される暗黒物質の質量が ${\cal O}(10-100)$ GeVほどとされているのに対し、本シナリオでは ${\cal O}(1)$ TeV ほどのの重いヒッグスポータル暗黒物質を許容する。生成されるヒッグスの多体度は ${\cal O}(200)$...
暗黒物質の対消滅断面積はthermal relic scenarioにおける暗黒物質残存量や間接探索実験におけるシグナルの強さを決める重要な量である。暗黒物質が軽いボゾンと結合する際には、対消滅断面積が非相対論的極限で非摂動効果により大きく補正を受けることが知られていた。この効果はゾンマーフェルト効果と呼ばれる。本講演では、ゾンマーフェルト効果を取り入れた対消滅断面積を量子論のユニタリティの議論による上限と矛盾しない形で計算する方法について議論する。我々の計算方法は、任意の角運動量を持つ部分波に適用可能であり、winoなどに代表されるmultistateの波動関数にも適用可能である。